2月22日に行われた、橋下徹大阪府知事と箕面市議会、倉田哲朗箕面市長との公開意見交換会の様子は、翌日の朝日新聞の朝刊でも報道された。
見出しを見る限りでは、いつもの「橋下劇場」型のパフォーマンスで、明確な試算もなく、無責任な持論をぶちあげたようだ.

朝日新聞:2月23日(火)
知事、箕面市議会に迫る
「廃港なら北急延伸」
「取引か」と反発も

朝日新聞によると、橋下知事は「市議会が伊丹廃港を決議すれば、(北大阪急行)延伸を進める。脅しと言われてもしょうがない」と言い放った、とある。
同時に、伊丹廃港の前提条件としていた、大阪中央部と関西空港を結ぶリニアモーターカー構想について、「スペックが高すぎ、新幹線が現実的ではないかという話が出始めた」として、新幹線案の検討も始めたことも報道されている。ただし、その場合は、「複線化が必要で、(リニア案よりも)高くなる」とのことである。

伊丹空港廃止は、関西空港の赤字を少しでも埋めるために突然橋下知事から出されたものであり、国土省や地元の伊丹市と十分な協議を経て出されたものではないことは、しっかり押さえておく必要がある。

神戸新聞:2月16日
国土省の幹部と伊丹市長を会長とする「大阪国際空港周辺都市対策協議会」との間で意見交換会が行われ、その場で「国土省としての方針を決める前に、地元の意見を聞いてほしい」「3空港協議会に大阪国際空港周辺都市対策協議会が入っていないのはおかしい」などの意見が出されたという。

橋下知事は「国土省は伊丹廃港を考えている」と言っているが、それは事実とは違い、実際はまず「短距離国際線の復活」「国内線での小型便の多頻度運行」「大阪空港(伊丹空港)の一層の活用」などが提言されており、伊丹廃港を今すぐ考えているわけではない。
そもそも、関西空港に比べて3倍の利用客があり、周辺への騒音対策費を支払っても黒字経営の伊丹空港を廃止しても、関西空港の赤字が解消される保証はどこにもない。
むしろ、かえって大阪府の抱える負債が増えるだけの危険性がある。

リニアモーターカーにしても、新幹線にしても、さらに府民の税金をつぎ込んでもそれを回収できる確かな試算を提示することなく、「方向性を示すのが政治家」と言い放つ橋下知事は、政治家としてあまりにも無責任である。

同時に、北大阪急行延伸についても、箕面市民の意見は賛否両論である。延伸により利益を得る地域も限られており、30年近くも「採算が取れない」という理由でストップしていた事業に、倉田市政になってから急に北大阪急行も阪急電鉄も乗ってきたこと自体が、不可解である。

倉田市長は「北大阪急行延伸は自分の公約だ」と強弁し、推し進めようとしているが、彼は自民・民主・公明・国民新党の推薦を受けて立候補したが、得票率は過半数に達していない。

当選したとはいえ、全面的に市政を委任されたと考えるのは傲慢である。貴重な市民の税金を使う事業に関しては、しっかりとした試算を示し、市民の合意を得る努力をまずするべきであろう。「北大阪急行延伸」の説明会で、箕面市の幹部が何度も「市民の皆さんの応援が必要です」と繰り返していたのも、それだけ市民の疑問や反対が強いことを、市自体も感じていることの表れであろう。

北大阪急行延伸にこだわるあまりか、橋下知事の「脅し」に屈伏したのか、大阪府からの補助金の増額を求めて、箕面市議会が2月議会で「伊丹空港」問題で何らかの決議をあげるという情報も耳にしている。

これが事実なら、箕面市議会としての見識が問われる問題であるし、箕面市民としても恥ずかしく感じる。「大阪国際空港周辺都市対策協議会」には箕面市も参加しており、自分の市の利益のみを優先して、伊丹空港廃止に流れるのであれば、他市からも軽蔑される愚行である。

政治は時間がかかるものである。北大阪急行延伸も伊丹空港も、歴史的に別々の流れを背景にしており、一緒くたにして論じること自体、これまでの積み重ねを無視した無理な論理である。

どちらの事業も数百億円から数兆円のお金が動く大事業である。私たちの貴重な税金が使われる以上、しっかりした試算と十分な時間をかけて、市民の合意を得る努力を倉田市長と橋下知事に強く求めたい。