【連載寄稿】「大阪府教育基本条例案」の狙いと危険性(その1)

私達「みんなの箕面」でも昨年継続して批判してきた「大阪府教育基本条例案」。
箕面市の問題を論じるこのブログで、「条例案」の問題について取り上げてきたのは、この「条例案」が単に教育の問題のみならず、戦後の日本国憲法を最高法規とする民主的社会を根底から覆すものになる危険性があるからです。
当の箕面市でも倉田市長サイドによる教育への支配の傾向が強まってきています。
今一度、教育は本来どうあるべきか、その根本を考え合うために、連載寄稿をお願いしました。編集長の私よりも教育問題に詳しい方です。
是非、お読みいただき、大阪・箕面の教育の今後を考えていきたいと思います。

みなさん、はじめまして。『大阪の教育のあしたを考える会』の長野仁志と言いま
す。初めて投稿します。大阪で高校の教員をしています。2011年の大阪の教育は『教
育基本条例案』に振り回されました。今年も同様でしょう。2月23日に始まる
大阪府議会で知事提案によって基本条例案が審議されます。今ある原案のままという
ことはまずないとは思いますが、どうなるか全く先が読めない状況です。いずれにし
ても現在発表されている案がどのような経緯で出されたのか、それを踏まえないわけ
にはいきません。

今回の条例案が出された背景がより明らかになったのは、12月3日(土)に開催
された大阪弁護士会主催のシンポジウム、『どうなる どうする 大阪の教育?大阪府
教育基本条例案を考える?』だったように思います。そのシンポジウムのパネラー
は、条例案の立案者である大阪市議会議員の坂井良和氏(元裁判官・弁護士)と小河
勝教育委員・二宮厚美神戸大教授でした。会場は反対派ばかりでかつ大阪弁護士会も
反対声明を出しているので、坂井さんは「針のむしろにいる」と苦笑していました。
その坂井氏は、「案は去年4月から構想して」いて、その目的が「統治機構を変えた
い」「戦後レジームを変えたい」「議会を変えたい」ということと明確に述べ、そし
て「学力テストと体力テストでの大阪府の結果がショックだった。教育委員会制度の
形がい化している。民意を反映させる仕組みをつくる。」ために案を作ったとその目
的を明らかにしました。「統治機構を変える」「戦後レジームを変える」というきわ
めて政治主義的な意味づけをもってこの条例案が出されていることが立案者の口から
明らかになった瞬間でした。戦後レジームの解体とは、言うまでもなく憲法改正を含
めたものであることは疑いないところでしょう。

条例案に対して現場出身の小河さんは過度の競争主義がもたらす弊害を説得的に述
べていましたし、二宮さんは、「強権主義と統制主義」「競争主義」「政治介入」で
問題と明確に指摘していました。会場には案の反対意見をもつ人が多く、小河さんや
二宮さんに対して坂井さんは、「考え方が違う」と正面から論争することを避けた印
象です。坂井さんはもっと説得的に述べるかと思いましたが、やはり孤立を感じてお
られたのか、トーンは抑制的でした。会場では坂井さんの発言に対して時に失笑もも
れていました。坂井さんは教育現場をまったくわかっておらず今更ながら空理空論に
思えました。

基本条例案に対するたたかいは、実は日本国憲法を守るたたかいでもあります。憲
法を守るとは平和と民主主義、そして教育と子どもたちをまもるたたかいでもあると
いうことです。そこをはずすことはできないとあらためて思います。(つづく)

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【書評】「新潮45」の12月号を読むと、橋下徹という政治家の「虚像」と「実像」がよくわかる

新潮社の月刊誌「新潮45」が、2号続けて「橋下徹」特集を組んでいる。
そのテーマは『「最も危険な政治家」橋下徹研究』である。
今月号の12月号は、11月号の続編になっている。

11月号の内容がよかったので、今月号も買ってみたが、前回同様、橋下府政の本質に迫ったものになっている。
編集部の独自調査で府庁職員の自殺問題の原因を明らかにしている記事、また、「反ファシズム」という視点だけでは橋下徹に勝てないという論文。
選挙の前に発行されていたのに、手に入れるのが遅かったと感じてしまった。
「みんなの箕面」でも「反独裁」という視点で記事を書いていたが、もう少し違った観点から切り込んでもよかったかもと思わせる内容である。

12月号の特集の記事の題名と筆者名を紹介する。

●自殺に追い込まれた府庁職員 本紙取材班
●前大阪府知事はやっぱり「病気」である 野田正彰(精神科医)
●「テレビとの共犯関係でつくられた虚像 江弘毅(編集者)
●「反ファシズム論」では彼には勝てない 佐藤勝(作家)

11月号では、橋下氏の「大阪都構想」がいかに実態を伴わない空論か、論破した論文もあり、その反響に応えての続編と言えるであろう。
12月17日(土)には次号が発売されるので、興味ある方は早く購読されることをお勧めする。
その際には、以下のリンクから買っていただけると、私たちの活動の一助にもなるので、よろしければお願いしたい。

前号が好評だったので、今日行った本屋では月刊誌なのに、珍しくバックナンバーも置いてあった。まだアマゾンでは新品同様品が手にはいるので、是非という方はこちらもお勧めする。

「橋下徹」を知ると言うことは、今の日本の政治の状況やメディアと政治との関わり、そして、それらに対する市民の反応や対応の意味を知ることに繋がる。
いろいろな意味で「危険な政治家」と言えるであろう。

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大阪市長選挙・大阪府知事選挙の結果から─「民意」とは何なのか─

私はこのブログの編集長として、言葉の使い方などできるだけ正確に事実を反映するように気をつけているが、最近感じるのは、「現代ほど、ことばが『政治的』に利用されている時代はない」のではないか、ということである。

11月27日実施に実施された、大阪市長・大阪府知事のダブル選挙、橋下徹と大阪維新の会の「圧勝」ということばで報道しているメディアが多いが、それは本当に事実を正確に反映しているであろうか。
細川内閣が誕生した過程が、政治がメディアによって左右されることを実証したことは、今や常識である。その当時の政局や次期選挙を扱う番組では、細川護煕氏や彼の率いる日本新党やそれと連携する勢力が時間的にも多く出演し、それに反対する勢力はほとんど取り上げられることがなかった。
その結果、自由民主党は結党以来、初めて野党に転落し、それ以降、財界が推し進める2大政党による政治支配に、日本は突き進んでいくのである。

今回の大阪ダブル選挙にも、マスメディアは積極的に介入している。その中身に関しては私の力量を越えるので、いずれふさわしい人が分析してくれると思うが、「みんなの箕面」としては、今回の選挙結果は「維新の会の圧勝」という表現が本当に正確なのか、そして「民意」を政治に反映するとはどういうことなのか、そのことについて問題提起をしたい。

今回は「大阪都構想」など事前の話題も多く、橋下徹氏のわざと「敵」を作り、議論を強引に二者択一に持っていくという政治手法が、まさに「劇場型」であり、刺激を求めるマスメディアにとって、絶好の題材であった。
しかも、今回は橋下氏は「選挙結果では国政も狙う」とお得意の花火を打ち上げ、大阪一地方の問題を一挙に、全国の問題にし、全国の目を大阪に集中させることにある程度成功した。
そういう状況なので、一定の投票率の向上はあったが、過去と比べて決して高いわけではないことは、まず事実として確認しておきたい。

大阪ダブル選:市長選投票率 40年ぶりに60%超え:毎日jp
両選挙が前回ダブル選だった71年4月の投票率は、市長選が61.56%、知事選が63.06%。市長選の投票率が60%を超えたのも40年ぶりとなった。

今回の大阪市長選挙の60.92%は確かに高いものであるが、それでも1971年よりも低いのである。
知事選に関しては、今回は52.88%。これは過去最高だった1975年の66.27%に比べると遙かに低い。
このことからわかることは、大阪市長選挙は橋下氏が出るので一定の注目を集めたが、知事選に関しては、有権者の関心はさほど高くなかったということである。

では、実際の数字を見てみよう。

得票数をみると、約23万票の差がついている。それだけ見ると大差のように感じるが、投票数の割合で見ると、59%対41%である。その差は18%。実数でいうと、12万人が平松氏に投票していたら、結果は逆だったのである。これは総有権者数のたった6%である。これは「大差」というよりかは、橋下氏が「逃げ切った」という表現の方が適切だと考える。

これは、有権者数の総数の対する、それぞれの候補者の得票率を見ると、更にはっきりする。橋下氏は全有権者の35.9%の得票率で、平松氏の25%との差は10%程度にまで縮まる。そして、棄権者の割合が39.1%で、橋下氏の得票率より高いのである。
棄権も有権者の一つの意思表示である。彼らは消極的に橋下氏を選ばなかった層である。平松氏の得票率と合わせると、64.1%が橋下氏を「選ばなかった」ということにある。
この事実から考えると、橋下氏が大阪市民の「民意」の総意であるとはとうてい言えない。彼は市民の3割強に選ばれたに過ぎないのである。

橋下・大阪維新の会が「自分達が民意だ」と強弁するのは、かなり実態を歪曲化していることは、知事選の結果を見ると、更にはっきりする。

得票数だけみると、松井氏が200万票を取って、倉田氏の120万票に「圧倒的な差」をつけているように見えるが、知事選は棄権者が47.1%もいる。
総有権者数で見てみると、松井氏の得票率は30%にも満たない。40万票が動けば結果が変わっていた。それは総有権者数の6%程度である。

このように、実際の数字を分析したらわかるように、選挙というものはわずか6%の有権者の票が動くだけで、全く違う結果になってしまうものなのである。だから、選挙に行き、自分の意思表示をすることが非常に重要なのである。
同時に、「民意」というものがいかにあやういものであるかということもわかる。ちょっとした投票率の違いで大きく結果が変わってしまうのであれば、選挙に当たっては有権者が十分に判断できる材料が、事前に多く提供されることが重要なのである。
しかし、実際は告示から投票まで2週間程度。私の家のポストには、松井氏や倉田氏の選挙公報のビラは一回も投函されなかった。判断する材料は選挙管理員会が発行している選挙公報のビラのみ。宣伝カーもそれぞれ1回しか出会うことがなかった。言っていることは、候補者の名前の連呼だけ。これでいったいどうやって、選べというのか。

「公職選挙法」は先進国でも珍しい「べからず法」と言われ、禁止事項ばかりである。その上、こんなに選挙活動期間が短ければ、多くの有権者はよくわからないままに、イメージやマスメディアなどで流されている情報などで判断せざるを得ない。
どれほどの市民・府民が「大阪都構想」や「大阪教育基本条例案」の中身について、しっかり知った上で投票しただろうか。日本の選挙は「暗闇選挙」とも言われる。公職選挙法が「改正」されるたびに、選挙期間が短くなり、禁止事項が多くなる。まるで、国民に都合の悪いことは知らせないようにしているかのようである。
今回の選挙の結果、2・3年後に「こんなはずじゃなかった」と橋下・維新の会に投票した人々が後悔しないことを、ただ願うだけである。

少なくとも、今回の分析でわかるように、「民意」というものは「多様」なものなのである。数的に1位になったからといっても、全体の3割程度の支持しかないのが実際である。
この時に求められるのが、自分に投票しなかった有権者の思いもくみ取りつつ、政治の舵取りをする「政治家としての倫理観」なのである。市長や知事は、自分を選んだ者だけの代表者ではない。市や府、全体の代表者なのである。
3割程度の支持しか得ていないという事実を自覚し、自分とは反する意見も尊重しながら政治を進める、これが首長の最も大切な態度である。
なぜなら、大阪市や大阪府は、橋下・大阪維新の会を支持している人達だけのものではない。ここに住む全ての人のものなのである。彼らを選ばなかった人々の「民意」もまた「民意」であるという、当たり前のことが通用する市政・府政になるように、これからも問題提起を続けていきたい。

最後になるが、橋下氏が平松氏の追い上げを逃げ切って、勝利した陰には、公明党の動きがあったことは、すでにメディアに報道されている事実である。既成の政党政治への反発が橋下支持の根本のように言われているが、彼が政治資金をパーティー券で得ていたことが報道されたりしているように、実際は従来の政治の枠組みの中で、橋下氏の当選が実現したことを書き添えて、しばらく橋下問題から離れて、ブログの本来のテーマである「箕面市政」の問題に戻りたいと思う。

上記の問題については、是非以下のブログなどを読んでいただきたい。

橋下徹氏・大阪維新の会と公明党が裏取引 なにが維新の会と既成政党の戦いだ(BLOGOS)

大阪維新の会、パーティーが収入源 10年分収支報告書(asahi.com)

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池田香代子さんなど多くの文化人の方々が、共同で「大阪教育基本条例案」反対アピールを発表しています

このような事態は、これまでは考えられなかったことだ。
大阪府という一地方で提案された条例案に対して、各方面から反対運動や反対アピールが起こるなんて事は。

これは、橋下徹前大阪府知事や大阪維新の会が提案した「教育基本条例案」が大阪だけの問題ではなく、日本の今後の教育のあり方、ひいては地方自治や国のあり方そのものに大きな影響を与えることになるからだ。
橋下前知事は「政治は独裁だ」といってはばからない。ファシズムをもじって「ハシズム」という言葉まで生まれている。
彼は知事就任当時、「大阪府は倒産寸前の会社」と言って府職員の給与を削減し、さまざまな福祉を削ってきたが、3年間に任期の中で結果的には赤字を増やし、今や大阪府の負債は6兆円を越えている。

大阪府の財政は黒字と言い張っているが、それは地方自治体では府債などを発行して得たお金も収入として計上できるというからくりを利用しているに過ぎない。借金を「収入」にして、見かけ上「黒字」にしているに過ぎない。
橋下前知事は辞任の挨拶で、大阪府を「優良企業」とし、職員の努力を褒め称えたが、そんな嘘を簡単に言える人間に、政治を任せることができるであろうか。
しかも、そういう言葉とは裏腹に「職員基本条例案」で、府職員をがんじがらめにする条例案を平気で提案させる男である。

もう、橋下徹は政治の世界から消えてもらうことが、大阪府民、大阪市民、ひいてはこの国のために重要なことなのである。だからこそ、多くの方々が橋下徹に対する反対の包囲網を張っていっているのである。

紹介する「大阪教育基本条例反対アピール運動」は、さまざまな分野で活躍されている作家や学者、芸術家の方々が賛同人として名を連ねている。
このことからも、この条例案が大きな問題を抱えていることがよくわかる。
以下に、アピール文の全文を紹介したいと思う。

大阪府教育基本条例案に反対します

私たちは、「大阪維新の会」が大阪府議会に提案している教育基本条例案について、大阪にとどまらず日本社会全体にとって見過ごせない問題であると考え、このアピールを発表することにしました。

私たちは何より条例案が、学校教育を知事及び議会の直接的な支配下に置こうとすることに強い危惧を覚えます。条例案によれば知事は、「学校における教育環境を整備する一般的権限」をもち、府立学校に至っては「教育目標」を設定する権限まで委ねられています。さらに、知事の目標に服さない教育委員の罷免、教職員への厳しい処罰などの教育への権力統制の体系が盛り込まれています。

人間を育てる教育には、教える者と教えられる者との、自由な人間どうしの魂の交流が不可欠です。また、子ども一人ひとりの現実に即した、教員や保護者、子どもを支える多くの人々の知恵と判断が尊重されなければなりません。知事や議会が教育上何が正しいかを決定し、それに異議をとなえる者を排除していくことは、教育の力を萎えさせ、子どもたちから伸びやかな成長を奪うものです。

しかも、学校教育を知事や議会の直接的な支配下におくことは、憲法と法令に抵触します。教育基本法第十六条は「教育は不当な支配に服することなく」としていますが、この文言は、時の権力が軍国主義教育をすすめた過去への深い反省のうえに定められた、日本の教育の大原則です。その結果、地方の教育行政は首長が指揮監督する一般行政から分離され、教育委員会がつくられました。

教育委員会の実態やその行政に不十分さがあることは私たちも知っています。しかしその解決は、教育委員会の民主的な改革に求められるものであり、知事らによる直接的な支配となれば不十分さはますばかりです。
私たちはさらに、「維新の会」の政治的な手法に危うさを感じています。いったん選挙に勝ったことによって、あたかもすべてを選挙民から白紙委託されたように振る舞うことは、ファシズムの独裁政治を想起せざるをえません。

多くの方々が力をあわせ、大阪府教育基本条例案やそれに類する計画をとめ、子どもの伸びやかな成長のために考えあい話しあい、できることから行動していくことを訴えます。

この反対アピール運動の「呼びかけ人」には、以下の方々である。

【よびかけ人】
池田 香代子(翻訳家)
市川 昭午(国立大学財務・経営センター名誉教授)
尾木 直樹(教育評論家)
小野田 正利(大阪大学教授)
小森 陽一(東京大学教授)
佐藤 学(東京大学教授、日本学術会議会員)
高橋 哲哉(東京大学教授)
竹下 景子(女優)
野田 正彰(関西学院大学教授)
藤田 英典(共栄大学教授、日本教育学会会長)

他に賛同人として、62名の方が名を連ねている。現代の日本の各分野で活躍されてされている方々である。その一部を紹介したい。

【賛同者(一部)】
浅田 次郎(作家)
阿刀田 高
安斎 育郎(安斎科学・平和事務所所長)
池内 了(総合研究大学院大学理事)
石坂 啓(漫画家)
内田 樹(神戸女学院大学名誉教授)
梅原 猛(哲学者)
永 六輔
小山内 美江子(脚本家)
小中 陽太郎(日本ペンクラブ理事、星槎大学教授)
斎藤 貴男(ジャーナリスト)
品川 正治(経済同友会終身幹事・一般法人国際開発センター会長)
杉 良太郎
妹尾 河童(舞台美術家・エッセイスト)
高畑 勲(映画監督)
高村 薫(作家)
辺見 庸(作家)
山田 洋次(映画監督)

そうそうたるメンバーである。このような方々が、一地方の条例に反対を表明するということは、今大阪で起こっていることは、日本という国の未来にも関わるだからである。

11月27日(日)に行われる、大阪府知事・大阪市長のダブル選挙は、大げさでなくこれからの日本という国のあり方を問う選挙でもある。「政治は独裁」という勢力を認めるのかどうか、その1点で有権者の良識が問われるものになる。
大阪府民、大阪市民の常識ある判断を期待する次第である。

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大阪弁護士会が「教育基本条例案」を考える緊急シンポジウムを開催します

「みんなでつくろう みんなの箕面」ウェッブで継続して批判してきた、橋下徹・大阪維新の会が作成、提案した「教育基本条例案」について、大阪弁護士会が緊急シンポジウムを持つという情報を入手したので、広くお知らせしたい。

詳しくは最後にビラへのリンクを張るので、それを見ていただきたいが、パネリストとして参加するメンバーが多彩で内容的にも充実したものになると思われる。

小河 勝氏(大阪府教育委員)
坂井良和氏(大阪市会議員・大阪維新の会所属・弁護士)
二宮厚美氏(神戸大学発達学部教授)

それぞれの当事者が席を並べることと、二宮氏は保育や教育の民営化・市場化などに批判的に関わってきた学者で、雑誌「ポリティーク」の編者の一人である。
これは、深い議論が期待できるシンポジウムだと思う。今後の大阪の教育がどうなっていくのか、関心のある方は是非参加する価値のある集会だと思う。

日時:2011年12月3日(土) 13:00〜16:00
場所:大阪弁護士会館2階 201・202
参加費:無料(当日先着200名)

人数に制限があることなので、参加されたい方は、参加申込書にもリンクを張っておくので、是非事前に申し込んでおくことをお勧めする。

今回の「教育基本条例案」といい、「職員基本条例案」といい、これまでの自民党府政でも提案しなかった、上位法律に反する条例案を平気で提案してくる、橋下徹大阪府知事。
この異常さがなかなか理解できなかったが、「新潮45」11月号の特集『「最も危険な政治家」橋下徹研究』での野田正彰氏(精神科医)の文章を読んで、ようやく合点がいった。

橋下徹大阪府知事は「病気」なのである。野田氏によると、精神医学的に「自己顕示欲型精神病質者」あるいは「演技性人格障害」と診断されるそうである。
この人格障害の特徴は以下の6点である。

(1)自己の劇化、演技的傾向、感情の誇張された表出
(2)他人に容易に影響を受ける被暗示性
(3)浅薄で不安定な感情性
(4)興奮、他人の評価、および自分が注目の的になるような行動を持続的に追い求めること
(5)不適当に扇情的な外見や行動をとること
(6)身体的魅力に必要以上に熱中すること

野田氏の見立てでは、彼の中学・高校時代の行動から考えると、(2)以外は全て当てはまるという。そう言われてみれば、「伊丹空港廃港」などさまざまな打ち上げ花火を上げて、いつも自分に注目を集めてきたが、何一つ実現することなく、府の借金は増え続け、今や6兆円を越えているという。

もうそろそろ、大阪府民も大阪市民も目を覚ますべきである。これ以上、橋下徹に大阪を任せるわけにはいかない。
今回の集会については、facebook内でイベントをたて、広く参加を呼びかけようと思う。
普通の大阪を取り戻そう。今緊急の課題は、まさに「当たり前の府政」に戻すことである。

「どうする どうなる 大阪の教育」(表)
「どうする どうなる 大阪の教育」(裏・申込書)

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「教育基本条例案」が白紙撤回されなければ、大阪府教育委員は総辞職。今こそ、本来の教育委員公選制の復活を望む。

(この記事は書きかけのものであるが、事態の重要性を考え、下書き段階で公開するものである。)

今回の大阪府教育委員の5名の方々の行動は、賞賛に値すると思う。
いったんは知事の教育委員会会議への出席の同意し、妥協に走ったかのように思ったが、最後はきっちりと教育に携わるものとしての道理を貫いてくれた。

総辞職を「無責任」と非難する向きもあるかもしれないが、私たちはそうは思わない。
橋下徹大阪府知事は「子どもが笑顔の大阪」を公約に当選し、自らの肝いりで蔭山氏などの教育委員を任命して、大阪の教育の質の向上を図ってきたはずである。
もちろん、教育委員の5名の方々もその思いで、仕事に取り組んできたはずである。

しかし、大阪維新の会が提案した「教育基本条例案」は、これまでの大阪府の教育施策の全否定から始まっている。これを読んで、怒りを感じない方がおかしい。
現行制度でも、教育に対して知事は一定の影響力を発揮することができる。ある意味、橋下知事の意向に沿いながら、教育委員会の自立性も保ちつつ、大阪の子どもたちのために力を尽くしてきた教育委員にしてみれば、今回の「教育基本条例案」は知事による「裏切り行為」である。
そういう橋下知事の許しがたい行動に対して、「総辞職」で抗議することは当然の行為であろう。

知事自身が任命した教育委員なのである。その教育委員全員が「総辞職」を表明したことは、知事に「三行半」突きつけたということである。つまり、橋下知事は自分が選んだ教育委員に「見捨てられた」のである。
もはや、橋下徹大阪府知事は「裸の大様」である。

このたび、10月25日に大阪府教育委員が連名で発表した「教育基本条例案に対する教育委員の見解」を入手した。非常に的を得た批判であるので、リンクを張ると共に、項目を紹介したい。

教育基本条例案に対する教育委員の見解

1. 私たちは、憲法・教育基本法を柱とする現行教育法令を尊重する。

2. 私たちは、教育という全ての子どもたちに関わる根本的な重要課題を、短期間の審議や選挙で決めるべきではないと考える。

3. 私たちは、今回の条例が生み出す教育委員会の無力化、教育と政治の一体化を認めるわけにはいかない。

詳しくは、是非「見解」全文を読んでいただきたいが、まともに筋の通った意見である。
私がたまたまつけていたTVに橋下知事が出演していたが、教育委員の総辞職についてキャスターから質問された彼の返事は「仕方がないですね」だった。
その後続いて、「僕は『教育委員会』のあり方を論議したいのに、向こうから議論を逃げているようでは仕方ないですよ」と発言した。この条例案のどこに、教育委員会のあり方を議論するような文面があるのか。
本気で議論したいのなら、条例案ではなく、直接話し合えばいいこと。彼は府民は詳しい内容を知らないことを見越して、平気で嘘をつく、そんな人間なんだと改めて思った。

橋下徹大阪府知事は、虚言、詭弁、暴言の鎧で身を守る、孤独な「独裁者」である。

このような人間にこれ以上大阪を任せるわけにはいかない。
11月末のダブル選挙では、大阪市民・府民の正しい判断が示されると共に、かつて行われていた「教育委員公選制」の対して、再度議論を始めて行く必要性を感じる。
これが、教育に「民意」を反映させる、重要な方法の一つと考えるからである。

(後日、加筆する予定です。)

 

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大阪府立高校のPTA協議会が大阪維新の会に対して、「教育基本条例案」の改善・撤廃を求める嘆願書を提出しました

今、橋下徹大阪府知事、大阪維新の会の足下が揺らぎ始めているといっても、過言ではないであろう。

通常、学校や関係機関との協力関係を重要視するPTAが、会長などの役員連名で時の政権が提案している条例案に対して、改善・撤廃の嘆願書を出すことは異例のことである。
それだけ、普通の保護者が読んでも、違和感と問題性を感じる条例案なのである。

私が10月15日付けで書いた記事で指摘した「教育基本条例案」の第10条であるが、やはり誰が読んでも、上からの押しつけと不快感を感じるものなのである。
また、嘆願書は第5章の第2条の5、「児童生徒の保護者も、部活動を初めとする学校運営に参加するなど、主体的に積極的な役割を果たすよう努めなければならない。」という条項にも触れている。
前回の記事では、私はコンパクトにまとめるためにこの条項には敢えて触れなかったが、この文章も「親は学校のすることに協力しろ」と強要していると読める。

子どもを中心によりよい学校を作るために、教師と保護者が協力し合うことは当たり前の話である。実際に学校に行って手伝う場合もあれば、家庭で「先生の言うことはしっかり聞けよ」と子どもに助言することも、大切なサポートである。
あるいは、よりよい教育を巡って学校と保護者の意見が食い違い、議論になることもあるだろう。しかし、それも子どものためを考えての話し合いであれば、最後には必ず一致点を見いだし、教師と親の関係性は更に強くなっていくのである。
そのようにして、2者が協力して学校を作っていくことが、戦後の新しい教育の根本精神の一つなのである。

それが、なぜ今回の「教育基本条例案」が親の不快感や反発を引き起こすのか。それは、条例というものを意図的にか(無意識にか)保護者を縛る「道具」としても使おうとしているからである。その意識が「〜ねばならない」という文言の列挙になり、読んでいる親に不快感を感じさせるのである。

そもそも、条例などの「きまり」は人を縛るためにあるものではなく、他人同士がお互いの権利を尊重し合いながら、共存できる社会を作るために制定されるものである。これが戦前とは違う、日本国憲法の下での法体系の思想である。そもそも、憲法も国家が国民を縛るためのものではなく、国民が国家の暴走を統制し、平和的に生きていける国にするために制定されたというのが、現在の憲法学の定説である。
だからこそ、憲法前文の主語は「日本国民」であり、決して「日本政府」ではないのである。

ところが、「教育基本条例案」の前文では主語は「教育行政」になっており、それにこれまで「民意」が反映されてこなかったとしている。その「民意」と「教育の中立性」と「政治」という言葉を巧みにすり替えて論理を組み立て、「議会」が条例を制定することで、「教育」に関与することは問題ないと結論づけている。
上記の前文の論理は、自己矛盾を起こしている。「教育の中立性」とは「特定の政党を支持し、あるいは反対するための政治教育」という狭い意味ではなく、政権がどのように変わろうとも「普遍的で民主的な社会の形成者」の育成のために行わなければならないという意味で使われてきたものである。

今回の条例案は、大阪府議会で第1党の大阪維新の会が作成、提案している。ということは、次の府議会選挙で民主党が第1党になれば、また別の条例が作成、提案され、教育の目標が変わってもかまわないということを、自らの行動で認めていることに等しい。これが「政治による教育の支配」なのである。
つまり、彼らの言っている「民意」とは「大阪維新の会」の教育観のことであり、だからこそ、その代表である橋下知事は教育委員会への出席を強く要望してきたわけである。
保護者は自分の大切な子どもと学校を、橋下知事と彼を支持する一地方政党が、彼らの思い通りに支配しようとしていることを肌で感じ、不快感を表していることに彼らは気づかなくてはならない。
大阪府民は、決して「馬鹿」ではない。橋下知事・大阪維新の会の狙いを理解し、反対しているのである。

ところで、条例案では「第9章の第48条で「この条例は、府の教育に関する最高規範である。」として、「大阪府教育基本条例案」の最高規範性を定めている。しかし、この条例が適用されるのは、第1章の第4条で定義されているように、「公立高校」や「公立小学校・中学校」のみである。つまり、私立高校にはこの条例案は適用されないのである。
それで、「府の教育の最高規範」と言えるだろうか。これでは、条例の体裁さえ整っていない「愚案」と言わざるを得ない。

このたび嘆願書を入手したので、是非多くの方々に府立高校に子どもを通わせる保護者の思いを知っていただきたく、ここに紹介したいと思う。私立高校に子どもを通わせている方も、最後に「教育基本条例案」へのリンクを張っておくので、一度読んでいただき、これが議会を通れば、大阪の公立学校がどうなっていくのか考えていただきたいと思う。
公立で起きていることは、そのうち私立高校でも起きることになる。
今回のことは、大阪府で子育てをしている保護者みんなの問題だと考える次第である。

平成23年10月19日
大阪維新の会 様

大阪府立高等学校PTA協議会会長・副会長・書記・会計・幹事・会計監査

嘆願書

先日来マスコミ報道で大阪の「教育の場」が慌ただしく報じられております。
「大阪維新の会 大阪府議会議員団」の「教育基本条例案」についてです。
私たちも大阪の子どもを府立の学校に通わす保護者として、この条例案を何度も何度も読み返してきました。
この条例案を読めば読むほどに条例案の改善・撤廃をお願いしたく府高PTAの役員総意の元で作成しました。当然、私たちは政治について意見を言うつもりはありません。
ただ、政治の道具であってはならない「教育の場」です。

子ども達が大人へと成長(自立)していくことはやがて「大阪の未来を豊かに」することとなります。どうか、こころ暖かく考え接し見守っていただきたいと思います。
多くの人たちによってまとめ作成しました嘆願書です。
よろしくお取り計らいのほどお願いいたします。

1. はじめに、私たちの生活上で聞き慣れない、言いなれない言葉があります「努めなければならない」この言葉をいろいろな方々に解説を尋ね聞きました。
非常に強制力のある文言のように思います。不快な気持ちにさせられました。

「児童生徒の保護者も、部活動を初めとする学校運営に参加するなど、主体的に積極的な役割を果たすよう努めなければならない。」

当然、愛する子どもたちです。少しでも子どもたちと接したいと思うのは私たちだけでは無いと思います。ただいくつかの問題点があります。
ご存じのように経済が今までにない程の不景気で家族を守ることが至難の時に、まして変動しての勤務時間帯の中どうして計画的に学校に通うことが出来ますか?部活は週1回?子どもが2人・3人いたら?介護を必要とする家は?

(わが子可愛さで参加した場合)ここでは運動部について集約してお話しします。
(1)子ども(生徒)は高校生です。運動部についてそれ相応に過激で高等なレベルです。指導?技術?責任?教育?保護者はどの部分に参加?主体的に積極的に何の役割を努めなければならないのかお教えください。
(2)(1)の指導・技術は自分の経験等で事が成せるかもしれません。ただし若さの残っている体力のある保護者に限られます。
(3)現在、府高P事務局(138校)から毎日のように部活での怪我の報告があります。
単なる怪我(一週間完治)程度ならよしとしても、補償問題・裁判沙汰等はあり得ないのでしょうか? この時の責任は・・?
(4)部活動は学校教育の一環として認識しておりました。大人への成長していく中で共に目的意識を持ち協調性を持っていく中での部活動は楽しい青春時代を送るなかでも勉強・友だち・と同じく大事なことと認識しています。

(第10条)の文面
2. 「保護者は、学校教育の前提として、家庭において、児童生徒に対し、生活のために必要な社会常識及び基本的生活習慣を身に付けさせる教育を行わなければならない。」

学校に通わせる前に社会常識?もしくは基本的生活習慣を? 私たちの高校生時代は悪さもし、色々な方々から叱咤激励され今日があります。でも、それは私たち以外にもたくさんおられると思います。(花壇に種をまき直ぐに葉・花を咲かせることが出来る花は優等生? 時間がかかったり結果がおぼつかないのが劣等生?)

先日ある学校の特別支援教育の状況を見てきました。発達障がい、アスペルガー症候群、ADHD、他人とうまくコミュニケーションのとれない子どもたちどうしたらよいのでしょう?ちょっとした問題行動でさえ、親が責められていくのでは・・。
私達は子どもの持っている色々な芽を柔軟にみつけ育(はぐく)み育(そだ)てることが最も大事な教育と思います。

保護者と学校の関わりは、非常に大事と考えますが、でもこうなると、私たちの仕事・ここの家庭の事情がどうしたら良いと?私たちの年齢の中には親の介護の方も数多くおられます。また、保護者自身が、部活動に協力出来ない場合を考えますと保護者同士の格差が生じトラブルに発展していきます。他にはPTA予算を通しての外部団体に委託するという方法もあります。当然相当な高額になっていきます。

大阪は庶民の町です。いろいろな意見があるからこそ「おおさか魂が栄えた町」と考えます。橋下知事の一方向だけが『大阪の教育』と決めてしまうことはこわいことです。

以上、保護者にとってこの条例が通ったら、どんなことになってしまうか。「こんなんやったら、あほらしゅうて、ウチの子を大阪府立高校に行かせるのはやめとこか」「部活動に入らさんとこか」といった気分が強くなっていくことが多々見られると心配です。
未来の大阪の教育をキチンと選択して子どもたちの可能性を広げていっていただきたいと強く強く思います。

大阪府議会に提案された「大阪府教育基本条例案」の最終案(大阪維新の会作成)

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大阪府教育委員会は橋下徹知事の横暴に屈することなく、教育の自主性を守ることを強く要望する

11月27日に想定されている「大阪府知事」「大阪市長」のダブル選挙で、「大阪府教育基本条例案」を主な争点にすることを、未だに主張し続けている橋下知事に、大阪府教育委員会が対案を出すという形で妥協し始めている。

教育目標「知事と共同で」大阪府教委、維新条例案に対案:YOMIURI ONLINE
地域政党・大阪維新の会(代表=橋下徹・大阪府知事)が府議会に提案した教育基本条例案を巡り、府教委は、府教育委員と知事が共同で教育目標を設定することなどを柱とする対案を維新側に提出することを決めた。
教育の政治的中立性を保つためにこれまで拒んできた知事の教育委員会会議への出席を全国で初めて認めたうえで、教育目標などを盛り込んだ「教育振興基本計画」を来年度末までに策定する。

妥協点の最大の部分は、これまで教育委員会も強く固辞してきた橋下知事の教育委員会会議への出席を認めてしまったことである。議決権はなくても発言権があれば、彼の意向に沿った内容が決定されていくことは、想像に難くない。

これはゆゆしき問題である。
何度も書いているように、戦前の教育の反省から戦後の新しい教育は「政教分離」を大原則として再出発した。これは、先の戦争では教育を、子ども達に日本の侵略戦争を「正しい戦争」と教え込み、そして天皇や国のために命を差し出すよう洗脳するために利用したからである。教育はこのように、目的を間違うと国民や国を間違った方向に進ませてしまうほどの力を持っていることを示している。

だからこそ、戦後に教育基本法が制定され、その前文につぎのような言葉が書き込まれたのである。

われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。

教育は「人づくり」である。しかし、それは時の政府や財界にとって都合のいい人間を育てるためではない。世界に誇る平和主義の日本国憲法の理想を実現するために行われるべきなのである。いわば、平和で民主的な新しい世界を作っていく市民を育てるために行われるべきなのである。
この文章は、改悪された教育基本法では削除されている。そのことからも、政府や財界が教育の目的を大きく変え、自分たちにとって都合のいいものにしていこうという意図は明白である。

以上のことから、教育の目標などに橋下知事個人の意図が入ることは、法的にも歴史的も倫理的も認められないのである。橋下知事の打ち出している政策のほとんどが、関西経済界の移行に沿ったものであることは、かねてから指摘されている。つまり、財界が自分たちにとって都合のいい子どもを作り出すため、橋下知事を利用して、教育を支配しようとしている。そのためには、教師の自由を奪い、お上のいうことを聞かなければ首を切ると脅迫するのが、一番簡単な方法である。「大阪府教育基本条例案」のほとんどが教員の評価や処分で埋め尽くされているのは、そのためである。

報道によれば、橋下知事は条例案を承諾しない教育委員に対し、「反対するなら対案をだせ」と責めよったようだが、これは彼の常套手段である。「大阪府教育基本条例案」は現行の法体系の中でも、いろんな上位の法律に違反していることが指摘されており、そもそも間違っているものである。間違っているものを出してきている知事に対して、対案など出す必要はない。「あなたは間違っているから、条例案を引き下げなさい」と要望するのが、教育委員の正しい態度だったのである。しかし、橋下知事の肝いりで教育委員になった蔭山氏には、そこまでの根性はなかったということか。情けない次第である。

橋下知事・府教委、教育基本条例案で直接バトル:YOMIURI ONLINE
四面楚歌の展開に、橋下知事は「では、教育委員が対案を出してください」と要求。生野委員長は、「対案を出すのなら、条例案は白紙撤回するのか」と迫った が、知事は「撤回はしない。並べて議論すればいい。政治家はいつまでも議論することは許されない。機が熟したかどうかを判断するのはトップの役割だ」と 突っぱねた。

この記事にあるように、対案を出したところで橋下知事は条例案を撤回する意思などないのである。結局、橋下知事の思惑通りになっただけである。このような状態を許すべきではない。

重要なことは、多くの府民はこの条例案は教師に対するものであると思っているようだが、実は保護者が学校教育に関わっていく権利も制限していく危険性をもっているのである。条例案の最終案を入手したので、その部分を紹介したい。

第2章 各教育関係者の役割分担
(保護者)
第10条 保護者は、学校の運営に主体的に参画し、より良い教育の実現に貢献するように努めなければならない。
2 保護者は、教育委員会、学校、校長、副校長、教員及び職員に対し、社会通念上不当な態様で要求等をしてはならない。
3 保護者は、学校教育の前提として、家庭において、児童生徒に対し、生活のために必要な社会常識及び基本的生活習慣を身に付けさせる教育を行わなければならない。

法律用語で「〜ならない」と書かれてあれば、それは「義務規定」であり、必ずそうしなければいけないと解釈される場合が多い。
教育権はそもそも国民にあるというのが、現代の教育の大原則である。教師はその信託を受けて、教育を行っているのである。だからこそ、教師は親の願いや思いをくみ取り、学校は保護者の信頼に応える教育を行っていかなくてはならないのある。
しかし、上記の表記では「社会通念上不当な様態」の解釈が曖昧なため、校長に自分の子どものことで相談しにいったとたん、「条例違反だ」と突っぱねられ、最悪「モンスターペアレンツ」扱いされる危険性がある。

今長引く不況や社会構造の変化の中で、さまざまな事情を抱えている家庭が増えている。しんどい家庭の親を支えながら、子ども達の指導に奮闘している良心的な教師も少なくない。
しかし、上記の条例案では、子どもの指導が十分にできない家庭は、その親が悪いとして更に追い込まれていくことになりかねない。場合によっては、「生活習慣も指導できない親の子どもは、学校に来るな」という事態をも起こしかねない。

このように、今回の「大阪府教育基本条例案」は教師を縛るだけではなく、府民である保護者をも縛る内容なのである。教育目標は知事も入って決定するということは、橋下知事は「府民は俺のいうことに従え」と言っているのと同じことである。
彼はこれまで何かにつけて、自分は「府民の代表」と言ってきたが、ついに府民の教育に対する願いまでも押さえつけ、自分の思い通りにしようとし始めている。これが「ファシズム」の始まりである。ナチスドイツも最初は合法的に選挙で選ばれ、政権を取った後自分たち以外を非合法化し、ホロコーストに走り、国家が自滅していった歴史を忘れてはならない。

大阪府教育委員会には、橋下徹知事の「大阪府教育基本条例案」に最後まで反対を貫くことを強く要望するとともに、大阪府民の皆さんには今度の選挙で正しい選択をし、この大阪を一部勢力から私たち府民の手に取り戻すことを、強く訴える次第である。

 

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箕面市が市立小学校・保育所における給食食材の放射能検査を実施すると発表しました

10月6日付けで、箕面市教育委員会から保護者宛に文書で、「市立小学校・保育所の給食食材の放射能検査を実施する」ことが発表された。

(報道資料)公立小学校・保育所における給食食材の放射性物質検査を実施します

私たち「みんなの箕面」は9月1日の記事で、「学校給食の食材の放射能検査」を強く要望していた。その立場から、今回の教育委員会の決定には一定の前進を感じ、敬意を表する。

実は、関係者の情報で前回の記事を書いた当時は、教育委員会は放射能検査に乗り気ではなかったことを把握している。その教育委員会を動かしたのは、間違いなく市民の声であり、あきらめずに声を上げていくことが市政を変える力になることに、私たちも確信を持つべきある。

今回の箕面市の決定は、一定評価に値するものであるが、私たちはまだいくつかの懸念を抱いている。それについて列挙したい。

まずは、放射能検査の対象になっているのが、公立施設の給食であること。
周知の事実であるが、箕面市は数年前から公立保育所の民営化を進めており、かつて公立であった瀬川保育所、桜保育所はすでに民営化されて独自のメニューで給食を実施している。今後の民営化の対象として、すでに箕面保育所、稲保育所が決定している。
また、第2総合体育館横の新しい保育園、箕面森町にできる「認定こども園」も民間保育所である。
これらの保育所にも、多くの箕面市の子ども達が通っている。現在の児童福祉法では「保育の主体は市」であり、市は公立・民間の違いを問わず、箕面市の子ども達全てに、平等の保育を保障する責任を担っている。

その立場から考えると、今回放射能検査の対象から民間保育所を外したことは、大きな問題だと言わざるを得ない。放射能汚染の影響は、幼い子ども達ほど受けやすい。
また、民間は公立よりも少ない補助金で運営されている。そういう民間園に自力で食材の放射能検査を要求することは、かなり無理のあることである。
箕面市には、今回の決定を更に推し進め、民間保育所の給食食材の放射能検査も市が責任をもって行えるよう、関係機関と協議するよう、強く要望したい。

また、検査対象には、以下のものをあげている。

給食に使用する肉類、魚介類、青果物などを対象に
・国等からの情報により、放射性物質に汚染されている可能性のあるもの
・過去に出荷制限や出荷の自粛が求められた地域で生産されたもの
を対象とします。

今回の福島第一原発の放射能漏れの問題に関しては、さまざまな利害関係が絡み、正しい情報が速やかに国民に知らされているとは言えない状況である。政府・メディアによる「情報操作」を強く感じた方も、少なくないだろう。
どの地域、どのような食べ物が放射能汚染の危険性が高いか、原発大国のフランスが、在日のフランス国民に知らせている情報が詳しいので、参考にしてほしい。

「食品の汚染に注意」在日フランス人向け公報・IRSN(9月22日)
フランス放射線防護原子力安全研究(IRSN)は9月22日、日本在住のフランス人向けに「福島第一原発事故に関する公報(7)」を発表しました。福島県 をはじめとする4県(茨城、栃木、福島、宮城)周辺における放射能汚染への注意喚起については前回の公報(6月8日)の内容からは大きく変わっていません が、今回は特に食品汚染の広がりに対する注意喚起が中心となっています。

この文書の中では、お茶やキノコ、多くの魚に放射能汚染の危険性の可能性が挙げられている。そして、汚染地域として、福島、宮城、岩手、栃木、秋田、茨城、群馬、埼玉、東京、神奈川、千葉の各県が名指しされている。
つまり、福島周辺だけでなく、放射能汚染はかなり広がっているのが、フランス政府の認識である。

もう一つ、私たちが懸念しているのは、今回の福島第一原発事件以降、安全とする放射能汚染基準を、政府が意図的に甘くしていることである。
以下の資料を見ていただきたいが、他国と比べて甘すぎる現在の日本の基準でOKだとしても、それが決して子ども達の健康を保障するものにならないことが十分に考えられるのである。

世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル

ならば、私たちのできることは何であろう。
箕面市が本気で子ども達の安全を考えるのならば、日本の甘い基準ではなく、箕面市独自で基準を定め、それに準じて、公立・民間の区別なく、放射能検査を行うことである。

箕面市の発表の中に、気になる表現がある。それは「該当地域の生産物が安全であったことを公表することにより、風評被害の抑止にもつながる」という部分である。これは、フランス政府が名指ししている地域からも、食材を調達する可能性があることを暗に示しているとも読み取れる。これは、風評被害以前に、子どもの安全を守るために、決してしてはならないことである。
放射能は目に見えず、今年は何回か台風が日本列島を通過したこともあり、私たちの予想以上に、放射能汚染が広がっている可能性も否定できない。
風評被害を抑止するとは、聞こえはいいが、場合によっては今の事態を招いた政府や東京電力の責任転嫁の言い訳に利用される恐れがある。箕面市は自信をもって、東日本からの食材の調達はしないと宣言すべきだと、私たちは考えている。

今回の件について、箕面市には何の責任もなく、むしろ被害者である。だから、行政の慣習を越えて、もっと強く国に補助金も含めて要望するべきである。
本気で子ども達の健康と未来を守る、そういう箕面市であってほしい。そのためなら、政府とも、しっかりと対峙してほしい。

この件のみ、倉田哲朗市長の直接のコメントを求めているのは、箕面市の未来を背負う子ども達に直接関係する問題だからである。
箕面市には、もっと踏み込んで、子ども達の食の安全を保障することを、改めて要望する次第である。

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教育基本法、地方教育行政法に違反する「大阪府教育基本条例(案)」をごり押しする、橋下知事・維新の会に強く抗議する

このブログは、箕面市の問題について書いていくのが中心であるが、それよりも重大な問題が大阪府庁で起こっている。橋下徹大阪府知事・維新の会から「大阪府教育基本条例(案)」が提起され、大阪府教育委員会全員が反対するという異常事態になっているのである。
万が一、維新の会が多数の暴力でこの条例案を府議会で可決すれば、大阪の教育は死んでしまう。箕面市の教育も同じである。それほどの問題を抱えている条例案。その9月12日段階での素案を入手したので、是非読んでいただきたい。

大阪府教育基本条例(案9.12)

24ページにわたる膨大なものなので、以下に簡単に骨子を載せておく。

ぱっと読むと、いいことが書いてあるように思ってしまうが、「教育基本条例案」の中心部分は、教師に対する厳罰と締め付けである。
子ども達は公立高校がどんどん統廃合される中で、高い学費を払って私学へ行かざるを得ない状況である。私学の授業料の支援金も、その恩恵に預かれるのは、半分を越える程度である。
また、保護者に対しても「学校に不当な様態で要求してはならない」など、本来教育権は国民のものであり、学校に対する保護者のさまざまな要求は、学校への期待と願いの裏返しである。
それを押さえつけるとは、もはや府民さえも押さえつけようとしている。橋下知事の本性が見えてきている。彼のどこが「府民の代表」に値するのか。

「大阪府教育基本条例案」が現行法と照らし合わせて、そのような法的な問題を持っているのか、自由法曹団の大前治弁護士が要点をまとめたものがあるので、紹介したい。

これだけの法的問題点があることを、弁護士である橋下知事が知らないはずがない。明らかな確信犯である。いつものパフォーマンスで大きく打ち上げ花火を上げ、教師と学校支配、公立学校の削減の部分だけ可決できればいいと考えてるのだろう。

「大阪府教育基本条例案」に対しては、前述の大前治弁護士が詳細な反論をしているので、是非お読みいただきたい。

大阪府教育基本条例(案)―――府民の立場からの批判 (弁護士 大前治)

橋下知事・維新の会がしていることは、「政教分離」の原則で再出発した戦後の新しい教育への挑戦と破壊であり、「府民の代表」と言いつつ、自分に反対する府民の意見を押さえ込もうとし、15歳の子ども達の進学先をますます狭めようとしている。
橋下知事が就任したとき、前太田房江知事の下で働いていた教育委員の首を切った。多くの教育委員は、彼のワンマンなやり方をメディアで批判しつつ、辞任した。
その時に、橋下知事の肝いりで教育委員に選任した陰山英男氏(立命館大教授)と小河勝氏(大阪樟蔭女子大講師)までもが、反対していることが問題の重大性を表している。
どんな思想・立場の人間であれ、本気で子ども達の学力を伸ばし、よりよい学校を作ろうと頑張ってきたきた者には、今回の「大阪府教育基本条例案」は現場の力を奪う許しがたいものなのである。

大阪維新の会:教育基本条例案 府教育委員全員「反対」:毎日jp
大阪府教委の教育委員会会議が16日開かれ、橋下徹・大阪府知事が代表を務める首長政党「大阪維新の会」が9月府議会に提案予定の「教育基本条例案」に対し、意見表明ができない府教育長の中西正人氏以外の5人の教育委員全員が「ものすごく乱暴」などと批判し、反対の姿勢を示した。
5人のうち、陰山英男氏(立命館大教授)と小河勝氏(大阪樟蔭女子大講師)の2人は08年10月に橋下知事の肝いりで委員に選ばれたが、いずれも激しく批判した。特に陰山氏は「この条例で大阪の教育がよくなるとは思えない。学力は上がってきているのに、今まで作り上げてきたものを自分たちで壊すことになる。耐えられない」と述べ、条例案が可決されれば辞任する考えを表明した。小河氏も「教員を管理し、処罰しようとする視点しかない」と反対論を展開した。

維新の教育条例案「可決なら辞める」 百ます陰山委員:asahi.com
特に異論が相次いだのが、一定の比率の教員に最低評価を行わなければならないなどと定めた管理強化の規定。陰山委員は「あの先生を辞めさせたいといういじめが始まる」「評価者の方向ばかり向く教員や、一部の保護者とつるむ教員も出てきます。(現場は)むちゃくちゃになりますよ」などと反対理由を述べ、「これで学力が上がりますか、先生のやる気が上がりますか」と訴えた。

大阪府教育委員会が9月16日付けで、条例案について意見書を出している。これも、異例のことと言えるだろう。資料を入手したので、読んでいただきたい。

大阪府教育基本条例案について

もはや、橋下徹氏は「府民の代表」でもなんでもない。単なる「暴君」である。「維新の会」は、彼に盲目的に従っているファッショ集団である。彼らに大阪の政治や教育を語る資格などない。

橋下徹氏が大阪市長になり、維新の会の後任者が大阪府知事になれば、本当に大阪は終わってしまう。彼らがやっていることは、「大阪壊し」である。
私たち「みんなの箕面」は「大阪府教育基本条例案」に断固として反対するとともに、今度の選挙では府民の良識が示されることを、切に願っている。

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