10月6日付けで、箕面市教育委員会から保護者宛に文書で、「市立小学校・保育所の給食食材の放射能検査を実施する」ことが発表された。

(報道資料)公立小学校・保育所における給食食材の放射性物質検査を実施します

私たち「みんなの箕面」は9月1日の記事で、「学校給食の食材の放射能検査」を強く要望していた。その立場から、今回の教育委員会の決定には一定の前進を感じ、敬意を表する。

実は、関係者の情報で前回の記事を書いた当時は、教育委員会は放射能検査に乗り気ではなかったことを把握している。その教育委員会を動かしたのは、間違いなく市民の声であり、あきらめずに声を上げていくことが市政を変える力になることに、私たちも確信を持つべきある。

今回の箕面市の決定は、一定評価に値するものであるが、私たちはまだいくつかの懸念を抱いている。それについて列挙したい。

まずは、放射能検査の対象になっているのが、公立施設の給食であること。
周知の事実であるが、箕面市は数年前から公立保育所の民営化を進めており、かつて公立であった瀬川保育所、桜保育所はすでに民営化されて独自のメニューで給食を実施している。今後の民営化の対象として、すでに箕面保育所、稲保育所が決定している。
また、第2総合体育館横の新しい保育園、箕面森町にできる「認定こども園」も民間保育所である。
これらの保育所にも、多くの箕面市の子ども達が通っている。現在の児童福祉法では「保育の主体は市」であり、市は公立・民間の違いを問わず、箕面市の子ども達全てに、平等の保育を保障する責任を担っている。

その立場から考えると、今回放射能検査の対象から民間保育所を外したことは、大きな問題だと言わざるを得ない。放射能汚染の影響は、幼い子ども達ほど受けやすい。
また、民間は公立よりも少ない補助金で運営されている。そういう民間園に自力で食材の放射能検査を要求することは、かなり無理のあることである。
箕面市には、今回の決定を更に推し進め、民間保育所の給食食材の放射能検査も市が責任をもって行えるよう、関係機関と協議するよう、強く要望したい。

また、検査対象には、以下のものをあげている。

給食に使用する肉類、魚介類、青果物などを対象に
・国等からの情報により、放射性物質に汚染されている可能性のあるもの
・過去に出荷制限や出荷の自粛が求められた地域で生産されたもの
を対象とします。

今回の福島第一原発の放射能漏れの問題に関しては、さまざまな利害関係が絡み、正しい情報が速やかに国民に知らされているとは言えない状況である。政府・メディアによる「情報操作」を強く感じた方も、少なくないだろう。
どの地域、どのような食べ物が放射能汚染の危険性が高いか、原発大国のフランスが、在日のフランス国民に知らせている情報が詳しいので、参考にしてほしい。

「食品の汚染に注意」在日フランス人向け公報・IRSN(9月22日)
フランス放射線防護原子力安全研究(IRSN)は9月22日、日本在住のフランス人向けに「福島第一原発事故に関する公報(7)」を発表しました。福島県 をはじめとする4県(茨城、栃木、福島、宮城)周辺における放射能汚染への注意喚起については前回の公報(6月8日)の内容からは大きく変わっていません が、今回は特に食品汚染の広がりに対する注意喚起が中心となっています。

この文書の中では、お茶やキノコ、多くの魚に放射能汚染の危険性の可能性が挙げられている。そして、汚染地域として、福島、宮城、岩手、栃木、秋田、茨城、群馬、埼玉、東京、神奈川、千葉の各県が名指しされている。
つまり、福島周辺だけでなく、放射能汚染はかなり広がっているのが、フランス政府の認識である。

もう一つ、私たちが懸念しているのは、今回の福島第一原発事件以降、安全とする放射能汚染基準を、政府が意図的に甘くしていることである。
以下の資料を見ていただきたいが、他国と比べて甘すぎる現在の日本の基準でOKだとしても、それが決して子ども達の健康を保障するものにならないことが十分に考えられるのである。

世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル

ならば、私たちのできることは何であろう。
箕面市が本気で子ども達の安全を考えるのならば、日本の甘い基準ではなく、箕面市独自で基準を定め、それに準じて、公立・民間の区別なく、放射能検査を行うことである。

箕面市の発表の中に、気になる表現がある。それは「該当地域の生産物が安全であったことを公表することにより、風評被害の抑止にもつながる」という部分である。これは、フランス政府が名指ししている地域からも、食材を調達する可能性があることを暗に示しているとも読み取れる。これは、風評被害以前に、子どもの安全を守るために、決してしてはならないことである。
放射能は目に見えず、今年は何回か台風が日本列島を通過したこともあり、私たちの予想以上に、放射能汚染が広がっている可能性も否定できない。
風評被害を抑止するとは、聞こえはいいが、場合によっては今の事態を招いた政府や東京電力の責任転嫁の言い訳に利用される恐れがある。箕面市は自信をもって、東日本からの食材の調達はしないと宣言すべきだと、私たちは考えている。

今回の件について、箕面市には何の責任もなく、むしろ被害者である。だから、行政の慣習を越えて、もっと強く国に補助金も含めて要望するべきである。
本気で子ども達の健康と未来を守る、そういう箕面市であってほしい。そのためなら、政府とも、しっかりと対峙してほしい。

この件のみ、倉田哲朗市長の直接のコメントを求めているのは、箕面市の未来を背負う子ども達に直接関係する問題だからである。
箕面市には、もっと踏み込んで、子ども達の食の安全を保障することを、改めて要望する次第である。