倉田市長が任命した、奥山副市長をリーダーとする「特命チーム“ゼロ”」は、平成25年度で一般会計の経常支出比率を100%以下にするという「緊急プラン(素案)」を発表しました。
この案は「子どもたちの未来にツケを残さない」という美辞麗句がついていますが、本当でしょうか? 他の記事にも書かれているように、「緊急プラン」には5年後以降の箕面市の未来がどこにも描かれていません。経常支出比率が100%以下になり、財政に余裕が出てきたとき、そのお金を何に使おうと考えているのでしょうか。今回の緊急プランで削減された予算を復活させて元に戻すでしょうか。決してそんな事はしないでしょう。
その使い途とは、ずばり「北大阪急行のかやの中央への延伸計画」だと考えています。今回は、その裏側にある、シナリオを探ってみたいと思います。

倉田市長は当選後の初登庁の際に、1期目で「北大阪急行電鉄のかやの中央への延伸計画」の実施の目途を付けたいと言っていました。いったい何を考えているのでしょうか。

ここのところの人口の減少や都心回帰現象により、郊外にヴィソラのような大規模ショッピングセンターや箕面森町という大規模住宅地建設と抱き合わせで鉄道路線を延伸しようとする考え自体無理があります。北大阪急行電鉄延伸計画は、ヴィソラでの利用客も減少してきているようなので、このまま時代の流れとともに朽ち果てていくのが現実的な見方でしょう。

北大阪急行線延伸推進会議なるものも組織されてはいますが、北大阪急行側も採算性が合わないためか消極的です。しかし箕面市として、実はすでに事業費に充てるため、交通施設整備基金として25億円もの資金を積み立てています。
箕面森町が思うように開発が進まない。ヴィソラの客足が減ってきている。延伸計画を推進する次なるネタは、やはり、船場地区の活性化ということになるでしょう。

そういう視点で見ると、船場繊維団地付近の様子が大きく変わってきています。大規模駐車場を完備したパチンコ店の出店や、繊維団地から撤退した跡地に建設された高層マンション。都市計画として、船場付近の見直しがあって、建築許可などが出たのかもしれません。
船場地区のあり方の見直し=マンション建設路線への変更となれば、人口の増加による歳入の増加も見込まれるし、北大阪急行に対しても利用客の増加も見込まれるということで、路線延長へのアピールにもなります。

北大阪急行線延伸推進会議の構成員として、商工会議所や、農協、船場協同組合、地元選出府議会議員、箕面市議会議長などが関わっていますが、その後ろでは、地権者、不動産関係者、建設業者などの利害関係者も間接的に絡んでいるのでしょう。
倉田陣営が市長選の時、「大開発は終わった」として全く開発問題に触れなかったのも、そのあたりの勢力が倉田市長を裏で支えているからだと考えています。

しかしながら、阪急電鉄が早い段階で千里線の延伸計画を中止したように、箕面市もかやの中央のこれ以上の開発を中止すべきだと思います。実施される事になれば、その時は地権者、不動産関係者、建設業者などが儲かるかもしれませんが、長期的に考察した場合、最終的には採算がとれないことが明らかなので、20年も経っているにもかかわらず、北大阪急行延伸計画が具体化されないのです。

箕面森町へ向けて国道423号線を延伸してできたバイパスによって、箕面の滝の水量が減ってしまったため、観光資源である箕面の滝がなくなってしまっては大変な事になるので、大阪府が年間3000万円かけて、地下水を吸い上げて箕面川に流す費用を補填しています。同じように、北大阪急行の延伸を推進してきた箕面市は、採算条件として「開業30年又は40年で経常累計損益が黒字転換し、かつ、借入残高がゼロ」としていますが、30年経っても北大阪急行が黒字転換出来なかったら赤字分を補填するのでしょうか?
そのときに使われるお金は、私たち市民の税金です。

先日、実家が箕面にあるが、仕事の都合もあって、大阪市内に住んでいる独身20歳代の青年と話をする機会がありました。「正直言って、今の箕面に魅力を感じなくなってきている。行政サービスが低下してきていることもあるので、住む場所はあえて箕面でなくてもいいと思うようになってきた」との事。
「箕面だからこそ」という魅力がなくなってくれば、人口流出、歳入減少につながります。直接色々な行政サービスを受ける機会の少ない20歳代の独身の青年でさえそんな風に考えている状況を倉田市長やチーム“ゼロ”の職員たちはどう感じるのでしょう?

箕面の「売り」であった福祉を削ってまで、大規模開発に永遠に市民の税金をつぎ込む体制を作り上げること。倉田市長や与党議員勢力を支えている利権者たちが、永遠に甘い汁を吸うことができる体制を作り上げること。これが「緊急プラン」の裏のシナリオだと思います。
「子どもたちの未来に永遠に負債を残す」、このような「緊急プラン」を許してはならないと思います。