倉田哲郎箕面市長も就任から1年半を迎えた。
彼が当選した2008年8月の箕面市長選挙をめぐる問題意識の中から立ち上がったこのブログであるが、倉田市政もそろそろ2年目を終わろうとする中で、少しずつ自民・民主・公明に支えられた与党市長としての問題が市民の目から見てもはっきりし始めている。

公約になかった「緊急プラン」による市民サービスを削ってまで、箕面森町・彩都・北大阪急行延伸などの大規模開発に市民の税金をつぎ込む体制作り。幅広い市民の反対により、一定の修正は余儀なくされているが、あくまで経常収支の見直しに終始し、箕面市の財政の身の丈に合わない大規模開発を見直す方向性は出てこない。

特に最近感じることは、重要な市政の決定が議会での十分な議論なく、倉田市長からトップダウンで直接下ろされてくることである。
その典型の一つが、市立中学校における「デリバリーランチ」だろう。

「デリバリーランチ」は倉田市長の公約の一つであったが、実際に実施されたのは市の補助金は一切出さない独自方法によるものだった。
市の予算を使わないとはいい方法だと思うかもしれないが、実は金を出さないということは「口も出せない」ということなのである。たとえば、箕面市は市内の民間保育園にも児童の保育を委託しているが、補助金を出すことで公立と同水準の保育を要望することができるし、補助金を出している範囲で、保育が適正に行われているかどうかチェックをすることができる。
「金を出す」ことで「口も出す」ことができるのである。

市立中学校の「デリバリーランチ」は生徒の数%に利用を見込んで実施され、2社の給食業者が入札で選ばれたが、そのうち2中・4中・6中を担当していた業者が、3ヶ月後に撤退してしまった。
それもある意味無理のない話で、市の補助金もない中で400円の弁当で収益を上げようと思えば、安い食材を使うか、人件費を削るしかない。しかし、箕面市はバランスのいい献立を要求し、その日の朝に注文できることを売りにしようとしていたので、そうすると食材のやりくりや毎朝社員を学校に派遣するなど、業者には負担になっていただろう。

結局、今は箕面市内の中学校の「デリバリーランチ」は残り1社でまかなっており、そのあおりを受けて、その日の朝に学校で注文できるという売りはなくなり、1週間分をまとめて事前に予約する方法に変わっている。
これはサービスの低下だと思うが、このような事態になったことは箕面市のホームページでも告知されていない。始めたときは大々的に宣伝しておきながら、うまくいっていないことは載せないという倉田市長の姿勢には不信感を持つ。

そして、肝心の献立であるが、子どもが持って帰ってくる献立表を見る限り、コンビニ弁当とたいして変わらない。これでは栄養バランスのいい弁当とは言えないだろう。補助金を出さずにいくら市のチェックを入れても、400円で採算を取ろうとすれば、この程度の献立が精一杯であろう。箕面市の給食は、肉類や野菜などは国産のものを中心に調達しているが、補助金なしでは給食業者には、それも無理な話だろう。食の安全でも、疑問が残る方法である。
箕面市は市立小学校での自校式の給食など、他市と比べても高い水準の給食を維持してきた。その上で、中学校でも給食を始めてほしいという保護者の要望があるのは確かである。それを受けて出された「デリバリーランチ」がこのていたらくでは、倉田市長のやり方は現実をよく知らない、安易な思いつきだというそしりは免れない。このような単純な思いつきが、直接担当している教育委員会を通して十分な検討もされずに、簡単に施策として実行されてしまう今の箕面市の状況に、危機感を感じるのである。

「子育てしやすさ日本一」を公約に掲げ当選した以上、倉田市長に要望したいことは、自分の施策が実際にどのような結果を招いているのか、現実をしっかり見てほしいということである。間違っていたとはっきりしたときには、撤回する勇気も持ってほしい。
そして、市の予算を使っていないことを売り物にするのではなく、教育にはしっかりとお金を使って、中途半端でない教育行政を要望したい。