すでに、箕面市からお知らせがあり、多くの保護者の知ることであるが、箕面市の公立中学校の「デリバリーランチ」は、平成22年度をもって廃止された。
給食業者2社が契約したが、利用率の低さから、導入後すぐに1社が撤退を申し出。残りの1社で、サービスを削り(1週間分先に予約する・生徒に販売するのは学校の教職員など)という形で、何とか継続してきたが、利用率の低下を止めることはできず、ついにその業者も契約の更新を断ってきた。
「デリバリーランチ」は倉田哲郎市長の立候補時からの、公約の一つ。「子育てしやすさ日本一」の柱の一つであった。それが破綻したと言うことは、彼の政治家としての見通しの甘さを明らかにするものであり、本来なら市長の名前で保護者への謝罪などあってしかるべきだが、教育委員会名での短い文書が一枚だけ。市のHPにすら載っていない。
自分の政策が失敗したときこそ、正々堂々と間違いを認めるべきだと思うが、彼に限らず、政治家というものは自分の失敗には甘いようである。

私たち「みんなの箕面」は「デリバリーランチ」導入時から、その見通しの甘さを指摘してきた。1食400円で経営を維持しようと思えば、市からの補助金は不可欠である。弁当を作っている保護者であればすぐに想像できることであるが、400円の弁当で利益を上げようと思えば、食材の質を落とすなりしないと無理なことはわかりきっていることである。なのに、市は「バランスのとれた、栄養のあるデリバリーランチ」と美辞麗句を並べて、大阪府の「スクールランチ事業」とは違い、補助金を一切出さない独自方式こだわり、失敗した。
以前から箕面市は「弁当を作ることで親子の繋がりを深める」など、いわゆる「弁当愛情論」を中学校で給食を実施しない理由にしてきたが、私たちはその論には与しない。弁当と愛情とはさほどの関係はない。小学校で完全給食が実施されていることを見ても明らかである。
だからこそ、私たち「みんなの箕面」は補助金を出して、「デリバリーランチ」の質の向上を訴えてきたのだが、その声が倉田市長に届くことはなかった。

そこに折しも、橋下徹大阪府知事が大阪府の給食実施率をあげるため、突然に「5年間で約246億円の補助金」を打ち出してきた。

中学給食、箕面市が導入に向け検討…大阪(YOMIURI ONLINE)
府は5年間で補助金を246億円計上し、政令市を除く市町村に対して1校あたり2億1000万円までの施設整備費を半額補助する計画で、府内の給食未実施校234校での完全実施を促すのが狙い。
箕面市は、給食設備の増設などに5億〜10億円、人件費などで年間5000万〜8000万円がかかると試算。同市教委学校管理課は「今後、府の補助メニューを見ながら、給食センター方式にするのかどうかなどを検討したい」としている。

橋下知事の発言は、多分に府議会選挙を意識してのものであると想像されるが、それでも長く保護者が求めてきた中学校での給食の実現に向けて、大阪府が動き出したことの意味は大きい。
しかし、それに積極的に反応したのは箕面市を初め、7市町村に過ぎない。それは補助金の額に対して、実際に給食を実施しようとすればかかる費用が多額であることが原因の一つであろう。

大阪公立中の「給食導入」前向きは7市町 産経新聞調査(産経ニュース)
大阪府の橋下徹知事が、公立中学校への給食導入補助を府の平成23年度予算案に盛り込んだことを受け、産経新聞が補助対象の府内41市町村の意向を調査したところ、新たに給食導入を決めたり、前向きに検討を始めた自治体は7市町にとどまっていることが23日、わかった。一部導入を含め、すでに実施している11市町を加えても半数以下の18自治体。運営経費の高さに加え、必要性自体を疑問視する自治体もあり、「給食は大阪の根幹の問題」ととらえる知事との温度差が表れた。

あくまで、大阪府が出す補助金は一校あたり2億1000万円の半額である。つまり、1億500万円。箕面市の中学校は6校(止々呂美中学校と彩都の新設中学校には、既に調理室が整備されている)、総額6億3000万円、それでは箕面市が試算している最低必要経費にようやく届く程度である。

新聞報道では、箕面市は「給食センター方式」にしか言及していないが、それでも5億円近い市税を使う必要がある。隣の池田市はセンター方式をずっと続けているが、アレルギー対応など細かい対応が難しく、箕面市の小学校で実施されている「自校式」には遠く及ばない。
私たち「みんなの箕面」としては、お金をかけてでも中学校の給食にも「自校式」を導入してほしいと考えるが、給食導入に関して大切なことは、保護者・生徒・先生達など現場の意見であると考える。まずは、多くの人が参加しての検討が必要であると思う。これまでのトップダウン方式での失敗を繰り返さないよう、倉田哲郎市長には現場の実際に関わる人たちを中心とした検討会をもつよう、強く要望したい。

最後に、多くの方が見落としている問題を一つ指摘したい。それは、中学校の授業時間との関係である。
現在、中学校の授業時間は50分、1日6時間授業で、3時過ぎに授業を終え、その後17:30まで部活動というスケジュールになっている。
もし小学校と同じ給仕式の給食を導入するとなると、そのための準備の時間が必要である。市内の小学校では準備と食べる時間を合わせて40分間取っている。
現在、中学校の昼休みの時間は、弁当を食べる時間と合わせて45分間。ということは、昼休みを全て使い切ることになる。

今の中学校のスケジュールを変えないで導入するとなると、子どもの休み時間がなくなることになる。もし、50分授業のまま休み時間を保障するとなると、部活動の時間が更に短くなることになる。
休み時間も部活動も、どちらも中学生にとっては大切な時間、権利である。給食のためにそれを削るとなると、本末転倒である。

ということは、子ども達の休み時間、部活動の時間を保障しつつ、給食を導入するとなると、授業時間を45分間にするのが一番現実的ある。しかし、箕面市は全国学力テストでも好成績を収め、文科省が全校参加を中止してからも、倉田市長からのトップダウンで全国学力テストへの全校参加を決めた経緯がある。その経緯から考えても、45分授業にするとは考えにくい。

そこで、私が予想する箕面市の中学校給食であるが、次のような形になる可能性が高い。

「デリバリーランチ」と同じように民間委託し、今度は補助金を出して「幕の内弁当」のような給食を各中学校に配達させ、生徒に配布する。

これならば、中学校の授業時間・スケジュールを変えることなく、給食を導入できる。しかし、これは多くの保護者の求める給食ではない。多くの自治体が消極的なのは、中学校のカリキュラムとの関係を考え、必要性が低いと考えていると想像できる。
私の最悪の予想通りにならないよう、現場の当事者を中心とした検討会を立ち上げ、子ども達にとって一番いい形の給食になるよう、倉田市長には要望したい。

【追記】
現在、教育委員会などが検討している「中学校給食」の内容の詳細の資料をぜひ知りたいと思っています。もしご存じの方がおられましたら、教えてくださればありがたいです。

【追記】2011.5.2
大阪府が、現在中学校の給食を実施している市町村をHPにまとめている。465校中、36校の実施である。

大阪府内における小・中学校給食について

その市町村の中学校のHPなどで時間割などを確認してみたが、例えば交野市では昼休みというものは存在せず、すべて「給食」として組まれていた。
他の市も見てみると、時間割の組み方としても興味深いものがあったので、また別のポストで取り上げたいと思う。