箕面市が、「箕面都市開発(株式会社)」の特定調停にかかる「調停案」について、HPに載せているが、読めば読むほど、箕面駅前と、特に新都心(萱野地区)の開発にからむ、陰の動きを感じざるを得ない。

まず、「箕面都市開発株式会社」は、1978年(昭和53年)に、駅前再開発に伴って箕面市が資本金を出資する第3セクター方式で設立され、「箕面サンプラザ」や「第1・第2駐車場」の運営・管理を中心に経営してきた(社史参考)。

それが大きく変わったのが、1996年(平成8年)からで、この年に「箕面新都心まちづくり協議会」が設立され、運営支援を開始を開始している。つまり、事業内容の中心が箕面駅前より、箕面新都心(萱野地区)に移行していくのである。

今回問題になっている、駅前の約1500平米の土地を12億3430万円で購入したのは、この前年の1995年である。

その資金繰りが焦げ付き、箕面市が11億1000万円を利率0.5%で低利融資したのが、元梶田市長時代の2004年(平成16年)。当時の議会でも、評価額4億円しかない土地に、11億円の融資はおかしいのではないかと議論されているが、賛成多数で可決されている。そのときに、策総括監だった現倉田哲朗市長が各会派を回って、融資を積極的に説得したことは当時の議員から聞くところである。

今回のそもそもの問題は、このときの融資にあることは明白である。それを後押しした現倉田哲朗箕面市長の責任は非常に重いものである。

その当時の箕面都市開発株式会社が行っていた事業は、たとえば箕面滝道の「橋本亭」の改築・再オープンなど、箕面の貴重な観光資源である滝道などの箕面駅前の盛り上げである。このときに、分社する形で「箕面わいわい株式会社」も設立されている。

同時に、事業の中心が「箕面新都心整備推進事業」に移りつつあることも、「平成16年度営業報告書」に書かれている。 以上のことから推測するに、当時箕面市は箕面駅前と新都心の両方を盛り上げていく方針だったのだろう。それが、新都心(萱野地区)に開発の力点がシフトし ていったことが、今回の調停問題の裏にあるストーリーだと考えている。

箕面都市開発株式会社は、箕面市が筆頭株主で、平成16年度から株の所有率は68%を下ることはない。つまり、会社の経営権は、間違いなく箕面市にある。 しかも、自社では一株も所有しておらず、2009年(平成21年)の株主は、以下の通りである。

大阪北部農業協同組合・箕面商工会議所・株式会社三井住友銀行・株式会社りそな銀行・株式会社池田銀行・阪急電鉄株 式会社・銀泉株式会社・三井住友カード株式会社・三井住友銀リース株式会社・摂津水都信用金庫・尼崎信用金庫。阪急バス株式会社

今回の特別調停案で、箕面市は債務超過のうち、5億2千万円を株式化(取得請求権付株式)するとしているが、それは箕面都市開発株式会社の発行株37万株をすべて私たちの税金で買い取るということである。ということは、他の株主は今回の特別調停で、持ち株の損を市税で穴埋めしてもらうということにある。こんなことが許されるのであろうか。

以上の経緯から考えると、箕面都市開発株式会社は、箕面市が新都心(萱野地区)の今後の開発(そこには北大阪急行延伸も含んでいる)に必要だからこそ、市民の税金を投入してまで救済したのであり、それをあたかも特別調停の場で対決したかのように演出しているのは、全くの茶番劇と言わざるを得ない。

今回の超過債務の原因になった、1995年の駅前の土地の購入であるが、これは第一駐車場前にある、メルセデス・ベンツの店舗の土地のことである。
ここは、調停案では評価額2億7300万円となっている。この土地の抵当権は箕面市が持っているはずだから、これを売却することで、残りの債務の4億6000万円の半分近くを回収できる可能性もある。
しかし、そのためにはシュテルンとの交渉も必要であろうし、この土地は平成21年から「事業用定期借地」として貸し出されている。この制度は最近改変され、10年〜50年、一般的に年間利率3.5%〜6%の利率で貸し出すことが多いようである。

箕面市がどの程度の利率で貸し出しているかは不明であるが、評価額2億7300万円の土地である。売りに出すより、貸し続けた方がうまみが多いと判断したのであろう。同時に、借り主であるシュテルンも賃貸契約を解約するほうが損をするので、借り続けるであろう。
しかし、特別調停案では、この賃貸料の収入は明確に触れていない。このお金は、どこに入るのであろうか。

箕面市は3年間で箕面都市開発株式会社の超過債務を解消させるとしているが、そんなことが可能なのだろうか。そして、5億2000万円の全額の回収を目指す(回収するとは書いていない)というが、その見込みはあるのであろうか。この5億2000万円は回収できないままになる可能性の方が高いのではあるまいか。

また、調停の参考資料に箕面都市開発株式会社は、「箕面サンプラザ1号館・2号館」の600平方メートルの所有権を持っており、破産により大きな混乱が生じるかのように書いてある。しかし、その所有面積は箕面サンプラザ1号館・2号館の敷地面積の15%弱に過ぎず、大きな問題が起きるとは考えにくい。しかも周知のように箕面サンプラザ各店舗敷地はは、すでに大手不動産屋により切り売りされており、さほどの説得力は持たない。

同時に、箕面都市開発株式会社は箕面市立箕面文化・交流センター指定管理者に今後10年間選定されたと聞いている。ということは、今後10年間は年間1000万円の返済は可能であろう。

また、箕面都市開発株式会社は新都心に土地を持っており、実際、その土地も売りに出されている。それを売ることによって、債務の回収もできるはずだが、それに手をつけることもしていない。

一番気になることは、特別調停案の中には、箕面都市開発株式会社の内部留保金のことに触れており、もし指定管理者から外れても返済可能としている。これは変な話である。
内部留保金があるのなら、箕面市が5億2000万円も借金を肩代わりする必要はないのではないか。その金額は明確ではないが、箕面都市開発株式会社の平成21年度事業報告書を見る限り、1億5000万円程度の可能性が高い。ということは、返済額の15年分である、

以上でわかるように、今回の調停問題は歴代市長が大規模開発を進めてくる中で、失敗した部分をずっと解決しないまま放っておいた結果、どうしようもなくなった部分を、私たちの税金でまたもや穴埋めをしようとしているというのが実態である。

では、なぜそこまでして箕面都市開発株式会社を救うのか。それは、この会社がどんな団体と関係をもち、新都心(萱野地区)に影響を持っているかをみればわかる、

  • 緑遊新都心株式会社(箕面新都心の地権者(47名/約3.1ha)で構成)の運営支援業務
  • 南山開発株式会社(萱野地区の地権者(33名/約2.7ha)で構成の支援業務

特に、緑遊新都心株式会社を作ったのは、箕面都市開発株式会社であるし、南山地区(萱野5丁目)にコーナンを誘致したのも、箕面都市開発株式会社である。箕面マーケットパークヴィソラの誘致にも、箕面都市開発株式会社が大きく絡んでいる。

つまり、今後の箕面市の開発(北大阪急行延伸)を考えると、その中で中心的役割を果たしてきた箕面都市開発株式会社を破産させるわけにいかなかったということであろう。
逆に、箕面駅前(西地区)は、これを契機に切り捨てられると考えておくのが妥当であろう。
もはや、箕面市は一部の利権者の利益のために何億という市民の税金をつぎ込んでもかまわないというほど、政治の倫理性が低下している。それを推進している倉田哲朗市長と、追従している自民・民主・公明・一部無所属の議員たちの罪は、大変重いと言わざるをえない。

(その他、ずっと箕面都市開発株式会社が関わりを持っている、市民活動フォーラムみのお・暮らしづくりネットワーク北芝・みのおアジェンダ21の会との関係や、なぜ新都心を萱野地区にもってきたのか、興味ある問題があるが、これについてはまた調べてから書きたいと思う。)