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箕面市は決して「財政危機」ではない〜私達の問題意識(3)〜

箕面市は「緊急プラン(素案)」のVer.1でもVer.2でも、「市の財政が緊急事態に陥っている」という印象を市民に焼き付けようとしていますが、本当に「緊急事態」なのでしょうか? 私達はそうは考えていません。「緊急プラン(素案)」には意図的に(?)説明されていない部分が多々あり、市の財政状況の全体像を明らかにしていません。

私達「みんなの箕面」が3月に行ったシンポジウムで、講師を務めてくださった初村尤而先生(社団法人大阪自治体研究所)の講演に基づいて考えていきたいと思います(初村先生のシンポジウムの資料はこちらからダウンロードできます)。

「緊急プラン(素案)」ではひたすら「経常比率」の悪化、「基金」の切り崩しによる減少を強調していますが、市の財政力を計る指針は「経常比率」や「基金」のみではありません。

箕面市は「不交付団体」になっていますが、それは「財政力指数」が1.04518で、自前の収入で十分やっていける状態だからです。

「財政健全化法」では以下の4つの指標で一定の基準に該当すると、「早期健全化団体」「財政再建団体」に指定されますが、箕面市はそのいずれの指標でも大阪府下でトップクラスの財政力を誇っています

(1) 実質赤字比率…府下で最高の黒字率
(2) 連結実質赤字比率…都市の中では、第2位の黒字率
(3) 実質公債費率…32市中16位
(4) 将来負担比率…将来負担はマイナス(将来、財政負担がない上に「おつり」が返ってくる状態)

初村先生は「これで財政運営がうまくいかないのは、市に財政運営能力がないか、不必要な事業を行っているかだ」と指摘しています。初村先生の言葉を借りるのなら「家庭でいえば衣食住に困っているのに、外国製の高級な車を買うなどの贅沢をしている」のが、箕面市の財政の実態といえるでしょう。

さて、「経常比率」が100%を越えたといいますが、その中味はどのようになっているのでしょうか? 初村先生の資料を基に考えてみましょう(平成19年度の箕面市の財政報告を元に作成)。

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グラフからわかるように、「臨時一般財源(資産の利用・活用、競艇事業収入など)」も入れると、平成19年度は約15億円の収支黒字になります。「経常収支比率」は計算式にあるように、「臨時一般財源」を除いた「経常一般財源」と「臨時財政対策債」と「経常経費充当一般財源」を元に算出します。

「経常一般財源」は主に「地方税(市民税・固定資産税など)」や「地方交付税」です。
「臨時財政対策債」は不足する「地方交付税」を穴埋めするために創設されたもので、実質「地方交付税」と同様に考えても差し支えありません。「緊急プラン」では平成21年度をもってこれがなくなると説明していますが、まだ決定したわけではありません。
「経常経費充当一般財源」は、市が実際に使ったお金のうち「経常経費」として計上されているものです。

これらを元に計算すると、平成19年度は約1億円の経常不足になり、「経常収支比率」が100.1%になった訳です。

では、なぜ箕面市の「経常収支比率」は100%を越えたのでしょうか?
以下のグラフを見てください。

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特に「公債費」「操出金」「補助費等」の増加が目立ちます。
「公債費」は借金の返済に当てられますので、市が抱えている借金が増えてきたということです。「操出金」や「補助金等」と比べても、平常収支に占める割合の大きさが目立ちます。
これだけの借金を背負うことになった原因について、私達は考える必要があると思います。

初村先生はここで重要な疑問点をいくつか提示されました。

(1) なぜ「経常一般財源」が平成19年度と比べて平成21年度は、約20億円も減るのか?(約244億円→約225億円)
(2)「経常一般財源」が約20億円も減るのであれば、「地方交付税」が約9億円程度増え、「経常一般財源」が増加するのではないのか?
(3)なぜ「臨時一般財源」も同じく、約25億円と大幅に減るのか?(約61億円→約36億円)

つまり、「緊急プラン」では収入をかなり低く見積もっており、その理由についての説明はどこにもありません。うがった見方をすれば、「財政危機」は机上の計算で作り出されたもので、実際はそれほどの収入減にならない可能性もあります。

さらに、初村先生は「緊急プラン」の大きな問題点を指摘されました。

箕面市は平成21年度から平成25年度の5年間で、約273億円の財源不足が生じるとしているが、実際の経常収支の不足額は約110億円程度であること。つまり、それ以外の約163億円の不足分は臨時収支部分、いわゆる「大型公共事業」などへの一般財源投入により生じている。

これで、私達の闘うべき相手ははっきりしたと思います。
箕面市の財政を苦しくしているのは、やはり「箕面森町」「彩都」などの大開発です。それに加えて、倉田市長は「北大阪急行の延伸計画」を掲げ、そのための基金の積み立てまで再開しました。
私達は箕面市が提示している「緊急プラン(素案)」とは別に、私達自身で市の財政を分析し、考えて行く必要があると考えます。

皆さんも是非、ご意見をお寄せください。みんなの力で、箕面市の市政を私達市民の側に取り戻していきましょう。

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「緊急プラン」の本質は大規模開発の財源確保〜私達の問題意識(2)〜

「緊急プラン(素案) Ver.2 」は予想通り、パブリックコメント募集の初日に、箕面市HPにアップされていました。6月最後の週に市民への説明会も行われ、引き続き7月21日までパブリックコメントを受け付けているということです。

仕事に追われ、なかなか更新できませんでしたが、パブリックコメントの募集にあたり、私達なりの問題意識、分析をがんばってアップしていきたいと思います。「緊急プラン」は提案したゼロチーム自身が認めているように、「市民の生活に厳しく切り込んだもの」になっています。
その分、多くの市民の生活に大きな影響を与えますので、何か行動しなくてはと思っておられる方も多いと思います。

私達にすぐできることといえば、とりあえず自分の意見をパブリックコメントに書いて、市に送ることでしょう。しかし、文章を書くにはそれなりの精神力が必要ですし、何よりも何を根拠に書いたらいいのか、悩んでおられる方も多いと思います。

そこで、ここからしばらくは、私達「みんなの箕面」なりの「緊急プラン」の問題点の分析と、箕面市の財政は本当に苦しいのかなどの、アップを再開していきたいと思います。
是非、お読みください。

前回の「私達の問題意識(1)」で、『「緊急プラン」を実行するためには、まず「国民健康保険料」の値上げが一番優先される』という内容を書きましたが、その通り、平成21年度は総額2億円の値上げが実行され、さらに1億円の値上げを市は提案しようとしています。
他に、前年度は反対が多くて見送った「保育所保育料の値上げ」や「障害者団体への補助金の削減」などを、至上命題として掲げています。
保育料はこれまで市で独自で補助金をつけ、国基準の7割程度の保護者負担でやってきました。それが一挙に9割、つまり20%も値上げされます。現在の保育料の最高金額(3歳児未満)は57,900円ですが、これが80,000円、22,100円もの値上げになります。年間で265,200円の値上げです。

倉田市長は「子育てしやすさ日本一」「老齢者の生き生きする街づくり」を公約に掲げて当選しておきながら、実際に行っている行政が「市民の命を削る」国民健康保険料の値上げ、「親の就労を妨げる」ほどの保育料の値上げならば、公約違反のそしりを免れないでしょう。

ここまでして、倉田市長が市民への福祉を削ろうとしているのはなぜでしょうか?
それは、「箕面森町」と「彩都」などの大規模開発へ、市民の税金を投入するための財源確保です。
私達が開催したシンポジウムでのプレゼン資料を使って、わかりやすく説明したいと思います。

平成21年2月9日に行われた「第1回彩都・箕面森町地域整備特別委員会」の資料によると、平成60年度までにそれぞれの事業に投入される市の税金は「箕面森町」で約317億円、「彩都」で約432億円です。
市の歳出の内訳は、学校や道路、下水道の整備に使われる「一般財源」、借金の返済に充てられる「起債等償還」、そしてそれぞれの町に人が住む限り市が負担し続けるサービスの「一般経費」です。
平成29年度までに「箕面森町」と「彩都」の事業に、市が投入する税金は以下のグラフのようになります(ここには、大阪府が負担する分は含まれていません)。

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それぞれの歳出を合わせると、平成22年度以降、20億円前後の金額が二つの大規模開発事業につぎ込まれることになります。
これと、「緊急プラン(素案)」が提示している市の財源不足を合わせてみると、興味ある一致を発見することができます。

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このグラフを見てもわかるように、平成29年度でも二つの事業は赤字です。市が提示している資料に基づいて作成していますので、特別な作為はありません。平成22年度の財源不足額が大きいのは、「臨時財政対策債」の廃止を計上しているからです。しかし、これはまだ決定していません。
ということは、二つの事業への本格的な市税投入が始まる平成23年度以降の財政不足額が、「箕面森町」と「彩都」の赤字分とほぼ一致することがわかります。

つまり、「緊急プラン(素案)」は、上記二つの事業への財源確保のために、市民への福祉を削ろうとしているとんでもないプランだと考えられます。
ところが、「緊急プラン(素案) Ver.2」では、二つの事業への市税の負担が異様に低く提示されています。どうも、「一般経費」の部分を、市は隠しているように見受けられます。
このあたりに関しては、今後の分析で明らかにしていきたいと思います。

以上のように、「緊急プラン(素案)」の本質は、「大規模開発継続のための財源確保」のために、いかに市民への福祉サービスを削っていくかということです。これは、本来市民の生活や命を守るべき、地方自治体の役割を放棄したも同然です。
市民から大きな反対の声が出てくるのも、当然なのです。

次回は、市が言うとおり本当に財政難なのか、「箕面森町」と「彩都」の二つの事業は市の青写真の通り、本当に黒字になるのか、検証していきたいと思います。
引き続き、お読みください。

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